2025年
★東アジア生涯学習研究フォーラソウル開催(案)
『TOAFAEC通信』第127号(2025.10.29)
東アジア生涯学習国際フォーラム in ソウル 開催(案)
1.
日程と場所:
·
日程: 2025年11月26日(水)~11月28日(金)
·
場所:イ・ホチョルブックコンサートホール(Tongil-ro, 767
Eunpyeong District, Seoul, Korea)
2.
主催/主管: ソウル特別市恩平区 / 恩平区平生学習館 / 東アジア平生教育研究会
3.
主要内容:
- 東アジア各国・地域の生涯学習政策と研究事例の報告及び討論
-
恩平区平生学習機関及び主要施設の視察
4.
行事日程:
11月26日(水): ソウル平生教育振興院訪問
11月27日(木):
フォーラム(第1セッション&第2セッション)開催
11月28日(金): フォーラム(第3セッション)開催(午前)、社会教育施設視察(午後)
<フォーラム開催(11/27-28) スケジュール>
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11/27 |
第1セッション:政策 |
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氏名 |
所属 |
発表題目 |
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姜大仲 |
ソウル大学 教授 |
生涯教育利用券政策の動向と課題 |
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呉遵民 |
華東師範大学 教授 |
中国の生涯教育体制構築に関する政策分析と展望 |
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董竹娟 |
北京教育科学研究院
書記 |
北京市における学習型都市建設の政策分析 |
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石井山竜平 |
東北大学 准教授 |
現代日本の生涯学習政策の実際 |
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伊藤光栄 |
NPO法人エイブル・アート・ジャパン 理事 |
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張徳永 |
国立台湾師範大学
社会教育学科 教授 |
台湾における生涯学習中長期発展計画(第2期)の理念と推進戦略 |
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第2セッション:機関 |
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氏名 |
所属 |
発表題目 |
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金鍾仙 |
ソウル市生涯教育振興院 企画調整本部長 |
地域生涯教育エコシステム形成における広域生涯教育振興院の役割 ― ソウル特別市を中心に
― |
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韓民 |
中国教育発展戦略学会 副会長・生涯学習専門委員会 理事長・研究員 |
中国の生涯教育機関の発展と課題 |
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国卉男 |
上海市教育科学研究院
副研究員 |
上海市における生涯教育機関の発展現況 |
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内田純一 |
高知大学 教授 |
戦後日本における社会教育施設の発展と課題 |
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劉以慧 |
国立台中科技大学 准教授 |
ショート動画教材の台湾高齢者教育における実践と推進効果 ― デジタル・マイクロラーニング事例を中心に
― |
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11/28 |
第3セッション:現場専門家 |
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氏名 |
所属 |
発表題目 |
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梁炳贊 |
公州大学 教授 |
韓国における生涯教育士制度の成立と発展 |
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黄健 |
華東師範大学 教授 |
国際的視野からみた中国の生涯教育従事者専門化の道 |
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馬麗華 |
華東師範大学 准教授 |
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上野景三 |
西九州大学 教授 |
日本における社会教育主事の歴史と社会教育史の形成 |
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陳柏霖 |
国立台北教育大学
心理相談学科 教授 |
教育現場における台湾高齢者講師養成メカニズムの研究 |
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★東アジア生涯学習研究フォーラムinソウル
以下のように分担して記録されます…石井山竜平さん
① 26日エクスカーション(ソウル市民大学、等):伊藤光栄さん
② 27日前半(政策の波、変化を呼び起こす):石井山竜平さん
③ 27日後半(現場の風、学びを伝える):内田純一さん
④ 28日前半(実践の転換、未来を照らす):上野景三さん
⑤ 28日後半(総括討議):山口香苗さん
⑥ 27日夜半(次年度以降の持ち方について):上田孝典さん
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① 26日エクスカーション(ソウル市民大学、等)
……伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)December 22, 2025 11:14 AM
エクスカーションでは、ソウル市民大学を訪れ、その経緯や仕組みについての説明
を聞きました。その後は、交流会をはさみ、ソウル市内にある歴史的な観光名所「徳
寿宮」(덕수궁)を見学しました。
ソウル特別市教育庁の西側にある坂道を上ると、白い建物が見えてきます。ここが
ソウル市民大学中部キャンパスです。坂道の途中にある建物の外壁には、次の言葉が
掲げられています。「함께하는 지성. 일상이 학습이 되고, 삶이 학문이 되는 도시, 서울
(共につくる知。日常が学びとなり、生涯が学問となる都市、ソウル)」
・写真「キャンパスの外観」

建物に入ると、平成教育士をはじめとした韓国チームの方々から温かい歓迎を受
け、ネームプレートを受け取りました。開始の時間までの間に参加者同士で挨拶を交
わし、和やかな雰囲気の中で交流がはじまりました。
チェ・イルソン(慶熙大学校)さんの挨拶の後、ソウル市民大学の平成教育士の方
より、このソウル市民大学の経緯と仕組みについての紹介がありました。ソウル市民
大学は、2013年に大学との連携による学習の場づくりがはじまり、2018年に初の施設
として中部キャンパスが開館されました。ソウル市が財政的な基盤を担い、2015年以
降はソウル市平生教育振興院が運営しています。現在は4つのキャンパスがあり、そ
れぞれ地域に応じた特色をもって運営されています。2018年から2024年までの6年間
で、各キャンパスで行われているプログラム数は累計4,787個、参加者数は166,001人
にのぼります(2024年はプログラム648個、参加者数16,390人)プログラムは、市民と
対話を重ねながら年代に応じた学習を計画して実施され、対面形式に加え、YouTube
を活用したオンラインプログラムにも力が入れられています。
プログラムのあとは、夕食もかねて交流会がありました。会場までは歩いて向かい
ます。日本よりもほんの少し肌寒い気温です。会場につくと、冷麺と骨付き肉をいた
だき、各国チームとの再会を喜び合う有意義な時間となりました。
外の日が落ちて暗くなり1時間ほど経った頃、交流会を終えて、次はバスに乗って
観光名所へ向かいました。徳寿宮という場所です。ここは、かつて王族の邸宅だった
場所で、ソウル市の高層ビルが立ち並ぶ中にぽつんと残っている歴史的な場所です。
敷地内にはいくつか宮廷があり、その中でも外交の場などで使用された石造りの西洋
式の建築が目を引きます。
・写真「大漢門」
後半、敷地内にある国立現代美術館で、国内のアーティストの作品も鑑賞しまし
た。この日の特別展は「光復80周年記念 «郷愁、故郷を描く»」があり、韓国のかつて
の風景や人を描いた作品が多く、過去を追体験したような思いでした。
観光名所ということもあるのか、一部の建築の前には、視覚障害のある人にもわか
りやすいように触ってもよい建築の模型と点字の解説が置いてあったり、移動しやす
いように障害のある人に向けてのサイン(案内)が整備されたりするなど、アクセシ
ビリティへの配慮も印象的でいた。
観光終了後、バスに乗りホテルに向かい、この日は解散となりました。初日にして
食事から建築、歴史を通して韓国の文化を体験できた夜となりました。
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②27日前半(政策の波、変化を呼び起こす)
……石井山竜平(東北大学) December 22, 2025 11:14 AM
フォーラムの最初のセッションであるこの時間には、姜大仲(ソウル大学)、呉遵
民(華東師範大学)、董竹娟(北京教育科学研究院)、石井山竜平(東北大学)、伊
藤光栄(エイブル・アート・ジャパン)、張徳永(台湾師範大学)、各人からの報告
と質疑の時間となりました。ここでは紙幅の関係で、ホスト韓国、そして、その後の
議論に関連する内容を大きく含んだ中国からの報告についてのみ、概要をお伝えしま
す。
韓国からは姜大仲氏(ソウル大学)より「平生教育利用券政策の動向と課題」と題
された報告でした。
韓国では 2018 年より、低所得層の成人を対象とし、国家および地方自治体が学習
費を直接支援する「平生教育利用券」事業が実施されています。姜氏こそが、本政策
を提案・推進した最重要のキーパーソンであることが、報告からよくわかりました。
とくに2021 年から 2023 年の間には、国家平生教育振興院の院長として平生教育利用
券に関する法令整備、予算拡大、そして地方自治体の参加拡大に特段の努力を傾けて
こられ、結果、2018年に開始された平生教育利用券事業は、7年間で総予算規模が 10
倍以上に成長し、支援対象者数も数千人規模から 10 万人規模へと拡大しています。
この制度導入における問題意識は、高学歴・高所得の人々こそがより積極的に平生
学習にとりくむという「格差」をどう是正するかであったといいます。平生教育利用
券は、こうした参加格差の緩和を目指す政策的介入手段として企画されたものであ
り、それがどの程度効果があったと捉えられるか、制度の地方分権化とも絡ませなが
ら検討された内容でした。
中国からは二つの報告があり、その第一報告が呉遵民(華東師範大学)による「中
国における生涯教育体系構築の政策的志向と実践的アプローチ」でした。
中国において生涯教育が法的に位置付けられたのは1995年、中華人民共和国教育法
に「生涯教育体系」が盛り込まれたのが最初でした。ただしその際は、「学歴教育と
非学歴教育の協調的発展」との表現にあるように、生涯教育は学校教育と並立する独
立した体系でした。それが、2019年、中共中央と国務院が発表した『 中国教育現代化
2035』 によって体系の融合段階があらわれ、そして2025年1月17日、中共中央と国務
院による通達『 教育強国建設規画要綱(2024—2035)』には「 ユビキタスでアクセ
ス可能な生涯教育体系」という具体的目標が提起されました。このことは「生涯教育
体系の構築実施を推進する段階に入ったことを示している」とのことでした。これは
「『二重体系』が並立、さらには対立するという伝統的な枠組みを根本的に打破し、
就学前教育、学校教育、継続教育、コミュニティ教育、高齢者教育などを統一的な国
家教育体系の中に全面的に組み入れるもの」とも説明されました。
このように、中国では学校教育と融合する形で生涯教育が政策化される段階になっ
たとのことです。報告はそれを肯定的に評価する内容だったのですが、その後、フォ
ーラム期間中の議論においては、その縛りが成人教育の固有性の発展に影を落とす可
能性はないのか、ということも議論されました。また、このかん、四つの国・地域に
おける生涯教育のシステムについては、日・韓が比較的似ていていると見る向きが強
く、そうした視点も提起も続くセッションではありましたが、学校教育と生涯教育の
システムが「融合」性でいうと、完全に独立している韓国が際立ち、日本と中国が近
い問題を抱えているという見方もあるのではないか、という感想も持った次第です。
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③27日後半(現場の風、学びを伝える)
…… 内田 純一 (高知大学) December 2, 2025 4:06 PM
第二セッションは「機関」をテーマに5本の報告がありました。韓国の金鍾仙さんは、
創設10年を迎えるソウル特別市生涯教育振興院の取組を中心に、市道レベルの広域生涯
教育振興院の重要性と役割を報告。全国17の広域振興院は、地域格差の是正、新たな学
習モデル開発、国家や多様な主体とのネットワーク形成を担う役割を果たしている。ソウ
ル市振興院は86名の職員を擁し、政策研究、地域生涯学習館等の支援、文解教育センタ
ー支援、高等教育機関との連携による「ソウルマイカレッジ」、市内4カ所の「ソウル市
民大学」の運営を手掛けている。前者では中高年を対象に実践重視の学習を行い、修了者
にマイクロディグリーを発行、後者では正規課程・生涯周期別課程等を提供しています。
学習権保障としての「生涯教育利用券」制度も、約1万9千人が利用しているとのことで
した。
中国の韓民さんは、社区教育機関の現状と11月に出された山東省社区教育整備通達を
紹介。山東省では、省・市・県・郷鎮・村に至る統合的な教育ネットワークを2030年ま
でに整備し、開放大学を基盤に各層の社区大学を設置、街道や村には社区ステーションを
整備する方針とのこと。課題として、資源活用、青年夜間学校の展開、弱者層支援、分野
別研修、教育機関の標準化、専門家組織化が挙げられました。
上海の国卉男さんは、市-区-街鎮-居村の4級ネットワークと、政府・学校・社会・
企業の横断的統合による上海市の生涯教育体系を紹介。公共文化施設を活用した市民学習
体験基地、人文ウォーキング、芸術夜間学校の整備に加え、学習型組織(企業、コミュニ
ティ、家庭など)育成も進展している。さらにデジタルプラットフォームや単位バンクの
整備により学習都市建設に相応しい運用の高度化を図っているとのことでした。
内田からは、東アジア各国・地域における「機関」概念を比較検討することを意識しつ
つ、公民館(「教育機関」)が法に基づく行政的装置であると同時に、地域の教育自治を
生み出す社会的装置であるという二重性を持っており、常にその相克の歩みの中で「教育
機関」としての公共性が問われ続けてきた発達史を整理。その上で、2000年以降に激しさ
を増す「官」の効率化や市場化の偏重による「公」の変質や消失状態が進行する中で、あ
らためて地域を基盤とする「社会教育」という概念に拘ることの意味や文字通りの「民」
の力を活かす「公」(パブリック)の再構築をめざす「第7世代公民館」の方向を提示し
ました。
台湾報告(張徳永さん、陳柏霖さんの代理報告)では、高齢者教育における10分程度
のショート動画教材(ミニ講座)の有効性を提示されました。そこでは、受講者には自己
主導的学習能力や学習転移の向上がみられ、講師側には、その結果を踏まえた教材開発や
オンライン教授法の最適化が求められるとされました。
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④28日前半(実践の転換、未来を照らす)
----- 上野 景三 (西九州大学) December 17, 2025 7:11 PM
今回のフォーラムは、「東アジア生涯学習の新しい地平:境界を超えるつながりと
広がり」をテーマに、Section1では新しい政策動向分析、Section2では生涯学習機
関・施設での取り組み、の報告を受けて、Section3では「実践の転換、未来を照ら
す」をテーマに社会教育・生涯学習職員の実践の転換を促し、未来を照らす役割につ
いて議論をすることが主たる課題となった。
最初の報告は、梁炳贊氏(公州大学)「韓国平生教育専門職員の現状と課題」であ
る。韓国の職員制度は、日本の社会教育法の社会教育主事を参考にしつつ、平生教育
士へと転換させていった経緯がある。その上で、配置基準を強化し、平生教育士資格
取得の教育課程の改編を行ってきた。このプロセスの中で、いくつもの論点が議論さ
れてきている。一つは、資格の「汎用性」対特定領域への「多様性」、不安定な地位
と孤立した労働環境問題、専門担当公務員職列化推進、孤軍奮闘から集団的な取り組
みへ、またネットワーク化への発展などである。その議論の深化について報告がなさ
れた。
次の報告は、馬麗華氏・黄健氏の「国際的視野から見た中国対立の生涯教育従事者
の専門化ルートの探究」である。報告の背景には、中国社会の急速な人口高齢化があ
り、それに伴う生産年齢人口の変化がある。このような問題意識をもって、「全民学
習支援」と「全年齢学習体系」構築への転換をはかることが企図されている。その
際、核となるのが生涯教育従事者の専門職化の制度化であるととらえられている。生
涯教育従事者という職業の正当化と専門性の確立が主たる課題となっており、中国型
の専門職化への道筋を解明しようとしているとの報告であった。
三番目は、日本からで上野(西九州大学)が「社会教育主事の歴史と社会教育士の
形成」という―マで報告した。社会教育士というテーマは、この間の東アジアフォー
ラムで関心が高かったことから、日本における社会教育主事制度の歴史を学制発布ま
でさかのぼり、それ以降の展開過程を跡付け、その延長線上に社会教育士を位置づけ
ようと試みたものであった。その観点から今日、社会教育士にはどのような性格と役
割が期待されているのかを分析しようとしたものであった。
最後の報告は、陳柏霖氏(国立台北大学)「育成から活用へ:台湾における楽齢講
師人材発展メカニズムの研究」であった。楽齢講師が増加の一途をたどっているが、
講師証明書の保有率が高くないことから、アンケートとグループインタビューの調査
を通じて、講師育成の課題について分析調査された内容の報告であった。
最後に、登壇者による総括討論のディスカッションが行われた。論点としては、専
門性の内容と体系化・計画化について議論がかわされた。
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⑤28日後半(総括討議)
……山口香苗 (秋田大学)December 1, 2025 9:39 PM
2025年11月28日(金)14時〜15時 総合討論 (司会:崔一先先生)
総合討論では、韓民(中国)・上田孝典(日本)・張徳永(台湾)・梁炳贊(韓
国)の4先生が、2日間のフォーラムを経て考えたことを共有しました。
韓先生は、今回、各国・地域の共通の課題、特に専門職システムと、生涯学習を誰
が・どこで・どう進めるかについて浮き彫りになったこと、議論できるプラットホー
ムがあることの重要性に言及されました。また、ソウル市民大学では、10代〜80代
といった幅広い年齢層を対象にした学習支援をしており、中国終身教育の対象が成人
と高齢者であることと比較し、大きな示唆があると感じたとのことです。
上田先生は、①ラングラン以降、個人を対象にする点が強調されてきた生涯学習
は、人生を通じたものである点が明確にされていたこと。②こうした生涯学習を、公
教育としてどう社会にビルトインしていくかということ。そのための学習型都市の重
要性。③そして、これを実現するための職員の重要性をお話しされました。今回、恩
平区平生教育館の平生教育士のみなさんがフォーラム開催を支えてくれました。
の公民館で果たしてこのように開催できるかと思うと、人員・財政的に脆弱な日本の
現状があり、生涯学習の発展は職員体制がしっかりしてこそだと感じたとのことで
す。
張先生は、各国・地域の社会教育、平生教育、終身教育などの用語が含む意味、異
なる年齢層にどのような学習・教育カリキュラムを届けるか、都市と農村の差異も重
要な視点だと感じたとのことです。また、専門職化についての議論では、高齢者学習
の専門職養成のみを行なっている台湾からすると、何をもって専門とするかが難し
く、各国・地域の社会状況によって「専門」に対する考えが異なるのではないかと問
題提起をされました。
梁先生は、公教育から排除された人々を拾ってきた社会教育は、こうした近代を作
るための課題だけでなく、今回、社会的な学習の重要性がよく指摘されていたよう
に、失業問題への対応、地域教育なども重要だと感じたとお話しされました。また、
かつて表面的だった韓国の学習型都市が内容を伴ってきたこと、そこには職員の奮
闘、平生教育としてのアイデンティティが背後にあるだろうとのことです。この他
にも参加者から、恩平区平生教育館の職員さんへの感謝等が述べられ、フォーラムは
幕を閉じました。
今回、私は、しっかりした専門職制度の構築、職員の十分な養成と配置が、成熟し
た社会を作るための重要な要素であることを改めて感じました。また、ここ数年、東
アジアでは生涯学習の議論が高齢者を対象にしたものに偏りがちでしたが、今回、若
年層に生涯学習を普及することの重要性が、度々提起されていたことが印象的でし
た。長い人生をどう充実させるか、どう社会と接点をもって生きるか、そしていかに
社会を作る人になっていくかが教育・学習の重点だという認識で、各国・地域一致し
ていたように思います。各国・地域の学習者がどのような思いで学びに向き合ってい
るのか、探ってみたくなる会でした。
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⑥27日夜半(次年度以降の持ち方について)
……上田孝典(筑波大学) December 1, 2025 11:18 PM
今後の開催について
26日の夜に、日本、韓国、中国、台湾の代表により、次年度以降のフォーラム開催
について協議を行いました。
これまで韓国、中国での開催は、いつも盛大な歓待と周到な準備の下で受け入れて
いただいていますが、日本側の懸念としてはそれに応えるだけの国内条件が整わない
ことがあります。改めてこのことを確認し、原則として参加にかかる費用(交通費、
宿泊費)は自己負担とすること、通訳等の必要な開催経費は予算を立て、参加費を
徴収することで合意しました。
また2026年度は日本開催の担当となります。開催候補地については今後の検討事
項になりますが、昨今の問題も念頭にありながら過去にも日中関係の悪化により中断
せざるを得ないこともありました。こうした点を考慮し、第三国(日本以外)での開
催も視野に入れるという提案がなされ、第一候補としてマレーシアでの開催可能性も
検討することになりました。
★2025 東アジア生涯学習研究フォーラム(ユネスコ生涯学習
都市・恩平にて開催)報告会
12月(TOAFAEC第331回)定例研究会にて 『TOAFAEC通信』第131号(2025.12.7)
……石井山竜平(東北大学)December 5, 2025 10:43 AM
2025年度の「東アジア生涯学習研究フォーラム」は、11月27日・28日に、韓国
ソウル、恩平にて開催され、ホスト韓国の皆さんにご準備いただいた環境のもと、中
国、日本、台湾から研究者が集い、報告、討議がされました。
とにかく、ホストを担われた恩平の平生教育士の方々の、大変に深いホスピタリ
ティ、学びの場をつくり込むことに向けた情熱と熟練をまざまざと感じた二日間でし
た。フォーラムは、「政策の波、変化を呼び起こす」「現場の風、学びを伝える」
「実践の転換、未来を照らす」という、三つの躍動感あるテーマのもと、協議を行い
ました。私個人としては、中国、台湾からの報告も刺激的でしたが、やはりホストを
担われた韓国のシステムについて、さらに理解を深めることができた、忘れ難い日々
となりました。
12月の定例研究会では、実際にフォーラムに参加された皆様から報告や感想、新た
に得られた知見、これからに向けての課題などを語っていただきます。
当日は、オンラインを併用します。私も含め、報告者の少なからずもオンラインで
の参加となります。遠方の方を含め、多くのご参加をお待ちしています。
記
◆日時:2025年12月26日(金)18:30~20:50頃(オンライン併用)
内容:「2025 東アジア生涯学習研究フォーラム」報告
発表・話題提供:石井山竜平(東北大学)、内田純一(高知大学)、上野景三(西九
州大学)、上田孝典(筑波大学)、参加者の皆さん
場所:東京都杉並区高井戸地域区民センター・第4集会室
報告
……祁 暁航(北海道大学大学院)December 27, 2025 3:09 AM
参加者(五十音順、敬称略):李 正連、上田孝典、江頭晃子、小林文人、松田泰幸、
山口真理子 オンライン/石井山竜平、上田孝典、上野景三、内田純一、上岡
稀生子、祁 暁航、武田拡明、松尾有美
内 容:
今月の定例会は、韓国恩平区で開催された東アジア生涯学習研究フォーラムの内容を
日本側参加者が共有し、今後の展望について議論する場であった。フォーラム自体は「東
アジア生涯学習の新たな地平——境界を超えるつながりと広がり」をテーマに、日本、
韓国、中国、台湾の四つの国・地域から研究者が集い、政策動向、機関・施設、専門職
員という三つのセッションに分けて報告と討論が行われた。
フォーラムの内容について、石井山先生(第1セクション「政策の波、変化を呼び起
こす」)、内田先生(第2セクション「現場の風、学びを伝える」)、上田先生(これ
からのフォーラムをめぐっての協議)からそれぞれ報告があった。参加が遅れた上野先
生からの報告(第3セクション「実践の転換、未来を照らす」)は、石井山先生が代読
した。
まず、石井山先生の報告によれば、政策動向に関するセッションでは、韓国の姜先生
による平生教育利用券制度の報告が印象的であったという。この制度は2018年の導入
以来、7年間で予算規模が10倍以上に拡大し、受益者も数千人から10万人規模へと成
長した。とりわけ注目すべきは、この制度の根底にある問題意識である。姜先生によれ
ば、従来の平生教育施策は結果的に高学歴・高所得層に利用されがちであり、学びから
遠い立場にある人々へのアクセスを保障するための最も有効な手段として利用券制度
が構想されたとのことであった。
そして、この制度の推進において中心的な役割を果たしてきたのが平生教育振興院で
ある。姜先生自身も2021年から2023年にかけて国家平生教育振興院の委員長を務め、
利用券制度に関する法的整備や予算拡大、地方自治体の参加拡大に尽力されたとのこと
であった。また、機関・施設に関するセッションでは、韓国の金先生により、広域の平
生教育振興院が地域格差の是正、新たな学習モデルの開発、多様な主体とのネットワー
ク形成などにおいて大きな役割を果たしていることが報告された。振興院は学校教育と
は人事的にも制度的にも完全に独立しており、内部に平生教育士を蓄積できる専門的力
量を備えている点も、日本にはない特徴として注目された。
中国からは呉先生により、終身教育体系構築の新段階について報告がなされた。2025
年1月に発表された政策通知では、「ユビキタスでアクセス可能な生涯教育体系」とい
う表現のもと、学校教育と終身教育の一体的統合が目指されているという。上田先生の
解説によれば、中国では従来、学歴教育と非学歴教育という区分のもとで終身教育が位
置づけられてきたが、近年は単位銀行制の導入など、両者を統合する方向へと政策が転
換しつつあるとのことであった。
機関・施設に関するセッションでは、内田先生から日本の公民館制度についての報告
がなされた。公民館は行政的措置であると同時に地域の教育自治を生み出す社会的装置
であるという二重性を持ち、その相克のなかで発展してきた歴史がある。2000年以降
の制度改革のなかで新たな課題が生じているが、この日本独自の制度をどのように評価
し、国際的な文脈のなかに位置づけていくかが問われている。
今回の定例会の議論で最も示唆的だったのは、学校教育と社会教育・生涯学習との関
係をめぐる比較の視点である。上田先生の指摘によれば、中国の終身教育は学校型の教
育モデルが中心を占めており、講師と生徒という形式での学習が一つの体系として構築
されつつある。一方、韓国の平生教育振興院は学校教育とは人事的にも制度的にも完全
に独立した仕組みとなっており、終身教育の推進において大きな役割を果たしている。
日本はその中間に位置し、教育委員会の内部で学校教育と社会教育が一定程度連動して
いる。この三者の位置関係を把握することで、各国の社会教育・生涯学習制度の特質が
より明確に理解できるように思われた。
文人先生からは、今回のフォーラムに対する率直な問題提起がなされた。すなわち、
制度論に議論が偏り、内容論が不足しているのではないかという指摘である。高齢者教
育の問題は東アジア各国が共通して直面する重大な課題であり、生涯学習にとって本質
的なテーマであるにもかかわらず、十分に取り上げられていない。また、日本の公民館
制度についても、その理論的・実践的な蓄積を国際的な場で積極的に発信すべきではな
いかとの意見が示された。
今後の運営方針についても上田先生から重要な議論がなされた。まず、各国の負担を
均等化し、持続可能なフォーラムを目指すという基本方針が確認された。具体的には、
参加者の交通費・宿泊費・食費は各自負担とし、受入国は会場・機材・資料の準備を担
う形とする。必要経費については参加費を徴収することも検討されている。来年度の開
催地については、上田先生の働きかけにより、マレーシアの筑波大学キャンパスを会場
として利用できる見通しが立っている。時期は8月下旬、盆明け頃が候補として挙げら
れた。この提案に対して、韓国・中国・台湾の先生方からは予想以上に前向きな反応が
あったという。ただし、日本側としての正式な決定はまだなされておらず、今後さらに
検討を重ねていく必要がある。
また、韓国フォーラムを振り返る中で、今回の最大の特徴は、報告よりも交流・議論
の場が重視されていたという点である。これまでの積み重ねが生き、非常に噛み合った
議論ができた、とは上野先生の感想である。さらに、報告の場だけでなく、食事や移動
の時間における非公式な対話のなかでも多くの交流と提起があったという点は、この
フォーラムの意義を考えるうえで重要である。2010年に上海で第1回フォーラムが開
催されて以来の蓄積を経て、参加者間には一定の相互理解が形成されており、それを前
提とした踏み込んだ議論が可能になりつつある。国際関係が複雑化するなかで、このよ
うな学術的対話の場が維持されていることの価値を改めて認識した。
私にとって、今回は通訳として参加した三回目のフォーラムであった。資料の準備や
現場での通訳作業を通じて、各国・地域の運営チームが会議の円滑な開催のために細部
にわたって心を配っていることを改めて実感した。230ページにも及ぶ資料集の作成、
同時通訳ブースの設置、そして恩平区の平生教育士やボランティアの方々による行き届
いたホスピタリティ、こうした真摯な姿勢があってこそ、フォーラムが順調に開催され
るだけでなく、真に意味のある交流が生まれているのだと思う。
AI技術が日常的に活用されるようになるなかで、通訳というポジションは今後変化
していくかもしれない。しかし、一参加者として、毎年のフォーラムは私にとって非常
に楽しみな学びの機会である。異なる国・地域の研究者や関係者が共通の課題について
どのように考え、議論しているのかを間近で観察し、先生方の議論から研究上の示唆を
得ることができる。新たな運営の枠組みのもとで、このフォーラムが今後も継続し、よ
り多くの研究者や実践者にとっての対話の場となることを願っている。

江頭さん、文人先生 (山口撮影))

左から 松田さん、上田さん、李さん